バナナにはなぜ種がないのか、どうやって子孫を増やすのか。3倍体で減数分裂できなくなる仕組みとあわせて解説

私たちが日常的に食べているフルーツ「バナナ」ですが、植物が増えるには種が必要のはず。バナナの種はどこにあるのでしょうか。

バナナの種がない理由。今あるバナナの品種は突然変異で3倍体という種無しになってしまった!仕組みを探ってみよう

普段私たちが日常的に口にしている「バナナ」は、皮を剥いて中身を丸ごと食べることができます。しかし、よくよく考えてみれば不思議なことで、植物は子孫を残すための「種」を持っているはずなのに、バナナの種がないのでしょうか。

引用元:Wikipedia

実は本来、野生のバナナにはちゃんと種があるのです。上記画像は野生バナナの断面で、内部には種がびっしり詰まっているのがわかります。

一方私たちが普段食べているバナナは、

引用元:Wikipedia

このように種がありません。いわばいつものバナナは「種無しバナナ」ということになるんです。植物としては異常であるといえるでしょう。

バナナの「3倍体」遺伝的な問題で種ができなくなる。染色体について知っておこう!

 

ではどうして種無しバナナが出来てしまうのかという仕組みについてみていきましょう。

人間もそうですが、植物体も母由来、父由来の染色体セットを1つずつもらって、2種類の染色体セットを持っている生物です。この染色体は設計図のようなもので、生物として成り立つための情報が全て詰まっている大事な設計図です。

バナナは元々は細胞1つの中にこの設計図セットを2つ持っています。この状態の生物が「2倍体」と呼ばれるものです。

生物が生長していくときには細胞分裂が行われるのは良く知られています。単純に細胞のコピーができるわけです。

ただ、次世代に子孫を残すために必要な「生殖細胞」だけは減数分裂という特殊な細胞分裂をします。設計図の例でいうと、2セットの細胞が1セットしかもたない細胞に分裂するということになります。

なぜ数を減らすのかというと、精子と卵子が融合して1つの細胞になるとき、データ量が余分に増えてしまうからです。

仮に精子で2セット、卵子で2セットの設計図を持って融合すると4セットの設計図をもった細胞(新個体)が出来てしまいます。これを繰り返すと4→8→16→32と世代を重ねるごとに無駄にデータ量だけが肥大化していってしまいますよね。

それを防ぐために、生殖細胞はわざと設計図を半分に減らして本来の数を保っているのです。これを減数分裂といいます。ただし、稀に減数分裂に失敗して4セットの設計図をもつ「4倍体」が出来上がることもあります。

さて、その4倍体と普通の2倍体が合わさるとどうなるでしょうか。

  • 4倍体が減数分裂:設計図2セット
  • 2倍体が減数分裂:設計図1セット

この2つが融合すると3セットの設計図をもつ新しい個体「3倍体」ができあがることになります。この3倍体バナナこそ、私たちが普段食べているバナナなのです。

なぜ3倍体だと種がないのか?という疑問は、先ほどの減数分裂に答えがあります。

バナナの染色体数は11で、これで設計図1セット分になるわけですが、3倍体バナナはこれが3セットなので、染色体数が33になります。

通常(2倍体)であれば、減数分裂で綺麗に11個ずつに等分することができますが、33を2で割ると綺麗に分けることができません。そうすると残すべき遺伝情報が正常に伝わらなくなります。

遺伝子異常を起こした生殖細胞同士が融合しても、それは途中で死んでしまいます

バナナは被子植物で、「種=新たな生命」となるわけですから、普段食べているバナナは種族としては終わっていることになります。

次世代を残せないバナナがなぜ普通に収穫できるのか。挿し木で株分けして増やす!つまりクローンに近い

ここまででバナナに種ができない理由はわかりました。でも種子を残せないのにどうやって私たちが食べているバナナは量産されているのでしょう。答えは「挿し木」して増やしているのです。

バナナは多年草ですので、新しい芽を出します。前述した3倍体バナナの株からは3倍体の芽が出てきます。それを取って、用土に挿して成長させると新しい3倍体バナナの木ができるわけです。

元々最初に3倍体バナナができたのは本当に偶然の産物であったでしょう。それが人間が食するにはとても都合が良いことがわかり、そのバナナを今日まで増やしてきたんですね。

前述したように種ができない、ということは次世代に子孫を残すことはできません

つまりいつも食べているバナナは、ずっと前に生まれた世代のバナナのクローンのようなものと考えることができます。

私たちよりも前に生まれたバナナを食べている……と思うと何だか不思議な感じがしてきますね。

当たり前のようにスーパーで売っているバナナですが、生い立ちを知ると何だか切ない感じもします。次回口にするときは、ちょっとだけ思いを巡らせてみてはいかがでしょう。

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