集合体恐怖症「トライポフォビア」、蓮コラなどのブツブツに対する嫌悪や恐怖はなぜ起きてしまうか考える

蓮コラなどに代表される穴や模様が密集したものを見ると嫌悪感や不快感を感じてしまう「集合体恐怖症」についての記事です。

トライポフォビアと呼ばれる集合体恐怖症。病には分類されないが、感染症や寄生虫などへの無意識な恐怖からくるものという考え方

本題の前に、「蓮コラ」というワードを目にしたことはあるでしょうか。

蓮という植物の実がなる花托(かたく)の部分は、穴が開いて密集しているのですがその部分が妙な気持ち悪さを持っていることから、それを使ったコラージュ画像を作ったりするものです。

引用元:Wikipedia

こちらが本物の蓮の花托の画像です。開いている穴の中に入っているのは蓮の実の部分。どうして穴が開いているのかというと空気を取り入れるためです。蓮は根っこが水中にあるので、この花托の穴を通して酸素を吸収しているわけです。

そのためこういった穴が密集しているのですがこれをパッとみて「綺麗だ」という感想を抱く人よりも「気持ち悪い」という人の方が多いのではないでしょうか。

このようなブツブツしたものや穴、模様などが密集したものに対する恐怖は、「集合体恐怖症」と呼ばれることがあります。

トライポフォビア(集合体恐怖症)は病気ではない

集合体恐怖症は横文字にすると「トライポフォビア」といいます。これはギリシャ語で「穴掘り」を意味する「トライポ」、そして「恐怖症」を意味する「フォビア」を繋げた造語です。

2009年にアメリカで広まり始めた言葉で、小さい穴や模様、斑点などの集合体に対して不快感や嫌悪感、恐怖を抱くことを意味します。

「恐怖症」と付いていますが、アメリカの精神医学会はトライポフォビアの存在を認めていないという立場で、専門家の間でも意見が分かれているそうです。

トライポフォビアの程度も、「うわキモーイ」で済む人から吐き気を催す人までその症状には幅があります。

ですから厳密には病(やまい)ではないのですが、程度に差はあれど多くの人が不快感を持つこの現象をトライポフォビア(集合体恐怖症)と呼ぶのが一般的になっています。

なぜ密集した穴や模様に恐怖してしまう?伝染病や危険のサインと無意識に思うためか

「上手く言い表せない」「何か良く分からないけど気持ち悪い」というのが大方の人の意見だと思いますが、なぜここまで穴や模様にしか過ぎない集合体に対して恐怖してしまうのでしょうか。

これには様々な説があるのですが、個人的になるほどと合点がいったのは以下のものでした。

その一方で、7月6日付けの科学誌「Cognition and Emotion」に英ケント大学のチームが発表した最新の論文では、別の仮説が提示されている。

「嫌悪感は感染症や病原体の回避に役立つことがよく知られています」と論文を執筆したトム・カプファー氏は話す。「こうした画像に対する人々の反応も、病気を回避する反応と考えることができます」

引用元:natgeo.nikkeibp.co.jp

例えば感染症でも有名な天然痘、はしか、チフスなどは症状が肌の表面にも現れて、全身に膿疱や斑点などができます。模様の点だけでみれば特徴としては密集していますよね。

また、食べ物が腐ったり、寄生虫やその卵などがある場合も模様が出ていたり密集していたりするわけです。

 

つまりこうした致死性のある病原体による病や物体に対して、危険を回避しようとする人間の本能的な部分が反応しているのではないかという考え方です。

それゆえに、単なる蓮という植物で害はないのだとわかっていても、無意識に「不快」や「恐い」と感じてしまうのでしょう。確かにこの理屈でいけば、トライポフォビアの謎の不快感も納得がいきます。そしてそこから分かるのは、私たち人間がいかに「視覚情報」に頼って生きているかということです。

ちなみに私は蓮コラなども含めて拒否反応を出すほど不快には感じなかった(鈍感?)ので集合体恐怖症ではないのだと思いますが、有事の際、生物として生き残れるのはより鋭敏なセンサーをもつトライポフォビアの人たちかもしれませんね。

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